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(更新日:2025年4月1日)

研究所の紹介

高齢化は我が国のとても重要な問題です。2050 年には人口の40%が65 歳以上の高齢者で占められることが予測されているからです。高齢化が進み、COPD(シー・オー・ピー・ディー)、呼吸器感染症、肺がん、間質性肺炎などの呼吸器疾患が増えてきました。当研究所は呼吸器医学・医療の最新情報を活発に収集し、それらを基に患者さまへ最良の呼吸器診療をご提供できるよう、診療科の支援をいたします。また、地域医療連携室と共同で地域住民の皆さまへ、最新の医学情報をお届けし、健康向上のサポートをいたします。

研究所の役割

1.呼吸器疾患に関係する臨床研究、及び未病診断や疾患予防も含めた臨床研究を行い、学術会議等を通してその結果を社会に還元すること

 

2.北広島市およびその近隣地域に居住される皆さまの健康増進のサポートをするため、呼吸器疾患の予防や早期発見に関わる啓発活動を推進すること

所長あいさつ

2020年4月、法人内の一部門として新設されました。

 

以来、初代所長として、地域の皆さまのお役に立つ研究や啓発活動に取り組んでまいりました。

 

これからも、ご指導・ご鞭撻のほど宜しくお願い申し上げます。

 

 

 

                                                                                                                                                         2025年4月1日  橋 弘毅

【略歴】

1954年 札幌市生まれ

1973年 道立札幌西高等学校卒

1981年 札幌医科大学医学部卒、医師免許取得

     内科学第三講座(現在の呼吸器・アレルギー内科学講座)に入局

1983年 国立療養所道北病院呼吸器内科に勤務

     市立函館病院呼吸器内科に勤務

1984年 即仁会北広島病院に勤務(2年間)

1988年 医学博士号を授受、同講座・助手

      旭川赤十字病院呼吸器内科勤務(2年間)

1990年 札幌医科大学医学部内科学第三講座・助手

1996年 同講座・講師

     米国コロラド大学ナショナル・ジュイッシュ医学研究センター

     (文部省在外研究員派遣)

2000年 同講座・准教授

2005年 同講座・教授(15年間)

2010年 同大学・副医学部長(4年間)

2019年 同大学・医療人育成センター長(1年間)

2020年 同大学を定年退職、名誉教授

     社会医療法人即仁会北広島病院勤務(4月〜)

【主な公職(過去)】

厚生労働省難治性疾患等政策研究事業調査研究班・前分担研究者

北海道特定疾患対策審査委員会・前委員長

北海道指定難病審査会・委員

北海道労働局・前地方じん肺診査医

【受賞歴】

2007年 北海道医師会賞並びに北海道知事賞

2018年 北海道労働局長表彰功績賞

2023年 厚生労働大臣表彰・労働安全衛生活動功績賞

 

地域の皆さまへのメッセージ

当研究所は札幌医科大学医学部呼吸器・アレルギー内科学講座と連携して、呼吸器疾患の研究を行なっています。

 また、市民公開講座やかかりつけ医との連携を介して市民の皆さまに向けての啓発活動を実施しております。

65歳以上の肺炎球菌ワクチン接種や筋炎の重要性をもっと認識していただく広報活動などを進めています。

これまでの活動(過去5年間)

2025年3月1日 大阪市内で開催された第163回びまん性肺疾患研究会において、大阪大学武田吉人先生のご司会の下、呼吸器疾患を専門とする医師・研究者を対象に

 高橋医師が『肺サーファクタント研究が間質性肺疾患診断にもたらしたインパクト』の教育講演を務めました。

2024年11月14日『日常診療における息切れを考える』をテーマとする全道の医療従事者向けWEB講演会において、高橋医師が嘴開を務めました。

2024年6月26日 千歳医師会主催の学術講演会において、千歳嗜眠病院竹藪公洋先生のご司会下、医療従事者を対象に高橋医師が『間質性肺疾患の診断と治療~早期診断と適切な治療・管理』のレクチャーを行いました。

 

2024 年6 月 高橋医師が北海総新聞から間質性肺疾患の取材を受け、その内容が『空せき、息切れ放置は危険』という見出しで7 月24 日付の朝刊に掲載されました。

 

2024 年4 月5 日 第64 回日本呼吸器学会学術講演会において、高橋医師による『ILD 診断における血清マーカーの活用法』についての教育講演がオンデマンドで行われました。

 

2023 年10 月31 日 『日常診療における息切れを考える』をテーマとするWEB 講演会において、高橋医師が『肺から診る“息切れ” ~ 慢性呼吸不全(間質性肺疾患を中心に) ~』を全道の医療従事者向けに解説しました。

 

2023 年10 月18 日 北見地区の医療関係者を対象に、道立北見病院小笠寿之先生のご司会の下、
『間質性肺疾患の地域医療連携~早期診断と適切な治療・管理』について、高橋医師が講演しました。

 

2023 年9 月3 日 全国の医療関係者を対象に『抗線維化薬が必要なILD 患者さんとのコミュニケーションのコツ』について、高橋医師が講演しました。

 

2023 年7 月25 日 北広島・恵庭・千歳エリアの医療関係者を対象にした『重症喘息最新治療』講演会で高橋医師が司会を務めました。

2023 年7 月20 日 宗谷医師会主催の学術講演会において、市立稚内病院村中徹人先生のご司会の下、高橋医師の講演『間質性肺疾患の地域医療連携 ‒ 早期診断と適切な治療・管理 -』を行いました。

 

2023 年7 月5 日 全道の医療関係者を対象に『間質性肺疾患の呼吸リハビリ』をテーマとした講演会で高橋医師が司会を担当しました。

 

2023 年4 月14 日 開催された第120回日本内科学会学術講演会(東京)で高橋医師が『間質性肺炎・肺線維症診療の進歩』の招請講演を行いました。

 

2023 年2 月17 日 開催された茅ヶ崎市医師会で『間質性肺疾患の地域医療連携-早期診断と適切な治療・管理-』について高橋医師が講演しました。

 

2022 年6 月22 日 北広島市医師会講演会において、野村医師が司会担当、高橋医師が演者で『高齢者の呼吸器疾患の特性と課題』について講演を行いました。

 

2022 年3 月8 日 国内の医療関係者(主にかかりつけ医)を視聴対象とするWEB 講演会において『間質性肺疾患の地域医療連携』について、高橋医師が講演しました。

 

2022 年2 月2 日 北広島・恵庭・千歳圏内かかりつけ医向けに、高橋医師の司会で、千葉弘文札幌医大教授による『間質性肺炎の病診連携及び呼吸器感染症』のWEB 講演を行いました。

 

2021 年11 月24 日に開催された ILD WEB Academy において、『肺サーファクタント研究を貫き学んだこと~IP マーカー SP-A/SP-D 測定キットの開発から臨床応用まで』の演題名で講演を行いました。

 

2021 年3 月22 日、特別養護老人ホーム東部緑の苑の職員の皆さまを対象に『北広島呼吸器疾患ケア勉強会』を野村医師の司会、高橋医師の解説で開催しました。

 

2020 年9 月、北広島医師会主催・北広島市共催で開催された北広島救急の日講演会において、『新型コロナウイルス感染と間質性肺炎』という演題名で高橋医師が講演を行いました。感染対策がしっかり施された会場には定数上限に迫る多くの地域住民の皆さまが出席されました。

 

 
 

主な呼吸器疾患の解説

・COPD(慢性閉塞性肺疾患):

喫煙が主な原因で気管支や肺が障害される病気です。肺胞が破壊された状態は肺気腫とも呼ばれます。薬物治療を受けている患者は国内に約50万人、未診断の潜在患者はその十倍と推定されています。この病気が進行すると、痰や息切れを自覚するようになります。階段や登り坂で息切れを感じる方はこの病気の可能性があります。重症化すると酸素を吸いながらの生活を強いられます。お薬を使っても喫煙で壊れた肺組織は元に戻りませんが、吸入薬を定期的に使用することによって、閉塞した気道を広げて息切れを軽減することができます。また、重症患者は、保険診療で在宅酸素療法在宅人工呼吸療法が受けられます。

自覚症状がなくても、既にCOPDを発症している潜在患者は珍しくありません。早期のうちは胸部エックス線検査で異常がなくても、スパイロメトリーという呼吸機能検査で発見できます。進行する前に早期発見により快適な生活を維持することが推奨されます。既に禁煙されていてもCOPDは徐々に進行するので、20年以上の喫煙歴を持つ方は一度検査を受けることをお勧めします。また、喫煙中の方には予防の観点からも禁煙を強く推奨します。当院では禁煙指導外来も行っています。

・気管支ぜんそく:

アレルギーで起こる気管支の病気です。胸でゼーゼー、ヒューヒューという音が聴かれ、咳や喀たんが繰り返し現れます(症状の程度が時間帯や日によって変動する)。症状のある状態をぜんそく発作と呼びます。日本では子供の8~14%、大人の9~10%がこの病気を持っていると言われています。子供のうちに発症する病気というイメージがありますが、65歳以上の高年齢で発症する方もいらっしゃいます。アレルギーを起こす原因(アレルゲンと呼びます)は、室内のダニやハウスダスト、犬、猫、兎などペットのフケ、カビの胞子などですが、原因物質を特定できないこともあります。

胸部エックス線検査では異常が出づらい病気なので、呼吸機能検査によって気道の空気の流れを調べ診断します。流れが悪い時(1秒率の低下)には、気管支拡張薬を吸ったあとにその流れが改善すれば喘息と考えます。また、痰に含まれる白血球(好酸球)呼気中の一酸化窒素濃度血液検査でアレルギー体質かどうかも調べます。

 

喫煙していれば禁煙しましょう。原因(アレルゲン)が見つかればそれを除去することが治療の第一歩ですが、仕事上や生活環境上の理由でそれが現実的でない場合には、お薬で治療を行います。その基本は吸入ステロイド薬(燻るような炎症を抑える効果)です。症状の程度によって、気管支拡張薬(狭窄した気管支を広げる効果)や抗アレルギー薬を追加します。気管支ぜんそくの治療のコツは発作を予防することです。発作を繰り返すと気道が硬くなり難治化してゆきます。したがって、症状が改善したからといって、治療を中止せず、定期的に受診することが推奨されます。

・肺炎:

肺炎は、細菌やウイルス、真菌(カビ)などの微生物が感染して、肺に炎症を起こす病気です。また、特殊な細菌として、結核菌と非結核性抗酸菌(NTM)を忘れてはなりません。患者(ホスト)の元々の健康状態によって、「市中で起こる肺炎(CAP)」と「病院・介護施設などで起こる肺炎(HAP・NHCAP)」に分けられます。原因となる微生物として、CAPでは肺炎球菌が最も多く、HAP・NHCAPではCAPの病原菌に加え、緑膿菌やMRSAなどの薬剤耐性菌が重要となります。

 

優れた抗菌薬が開発された恩恵で、健康で若い人のCAPでは、軽症であれば内服薬での外来治療が可能です。しかし、肺炎球菌による肺炎では重症化し敗血症を起こすことも珍しくありません。健康を自覚している人でも、普段から禁煙に努めることと、インフルエンザワクチン肺炎球菌ワクチン(65歳以上)を接種しておくことが、肺炎予防・重症化予防につながります。

HAP・NHCAPは重症化しやすく、注射薬の使用と全身管理を必要とするケースが多く、重症度や抗菌薬耐性菌の可能性を考えながら、抗菌薬を選択します。普段からインフルエンザワクチン肺炎球菌ワクチン(65歳以上)を接種しておくことが、肺炎予防・重症化予防につながります。なお、終末期医療としてNHCAPを治療する場合には、患者本人にふさわしい治療を家族ともよく話し合いながら進めていく必要があります。

・結核:

抗酸菌に属する結核菌が肺に感染して起こす病気で、人から人に感染します(第2類感染症)。肺以外にもリンパ節、腸、骨などにも感染します。肺結核の自覚症状は、せき、たん、血たんは特徴的ですが、体のだるさ、発熱、寝汗、体重減少などの全身症状だけのこともあり、発見の遅れにつながります。若い年齢層での発病もありますが、高齢者や免疫力が落ちた人(アコントロール不良の糖尿病、ステロイドによる治療中、腎臓透析中、悪性腫瘍)に発病することがありますので、注意が必要です。症状のある方には、胸部エックス線検査や胸部CT検査をお勧めします。周囲の人たちに結核を移す前に診断・治療を受けたいものですね。

・肺非結核性抗酸菌症:

結核菌以外の抗酸菌(これを総称して「非結核性抗酸菌」と呼びます)が肺に感染して起こす病気です。土や水などの環境中によくいる菌で大抵は発病しませんし、結核菌とは異なり人から人に感染しません(伝染病ではない)。肺結核が年々減少しているのに対して、最近、増加しています。女性にやや多く、症状がなく、健康診断で発見されることも珍しくありません。

 

症状は、咳、喀たん、血たん、だるさ、発熱、寝汗、体重減少など、結核とよく似ています。診断は胸部エックス線検査、胸部CT検査、喀たん検査、血液検査で行います。気管支鏡検査で検体を気道の奥から採取して菌を調べることもあります。非結核性肺抗酸菌のなかで特にマックと呼ばれる2種類の菌が原因として最多であり、クラリスロマイシンと2種類の抗結核薬で治療します。ただし、菌が完全に消えることはまれなので、治療終了後も再発しないか定期診察が必要です。

・間質性肺炎と肺線維症:

(2020年9月に開催され北広島医師会主催の市民公開講座で当院の高橋弘毅医師が講演した内容の要約を記載します)

 

肺は肺胞という、目に見えない小さな袋が集まったスポンジ状の臓器です。肺胞と肺胞の隙間は毛細血管や結合組織で埋まっていて、そこを間質と呼びます。間質性肺炎とは、この隙間組織に起きた肺炎のこと。また、間質に線維成分が沈着する場合があり、肺線維症という病名が付けられます。間質性肺炎・肺線維症の早期では症状がないこともありますが、進行すると乾性咳嗽(痰が出ない咳)や呼吸困難を自覚するようになります。

 

間質性肺炎の原因は様々で、急性発症ではウイルス感染などが主な原因となります。新型コロナウイルス感染による肺炎の多くも間質性肺炎に分類されます。しかし、慢性発症の間質性肺炎は感染症と別な原因で起きます。頻度の高い原因・疾患は、関節リウマチなどの膠原病カビやペットが元で発症する過敏性肺炎です。また、薬剤・サプリメントの長期使用アスベスト(石綿)の吸引も原因となりますので、注意が必要です。

あまり知られていないようですが、意外と多いのが膠原病肺です。関節リウマチシェーグレン症候群皮膚筋炎などでは20-30%の患者さんで合併していますし、強皮症では80%と高率です。また、膠原病に罹っていることに気付かない方も意外に多いようです。自覚症状や皮膚、関節症状のある方は医療機関の受診をお勧めします。また、膠原病で通院中の方は肺病変の有無について主治医の先生に相談してみてください。

過敏性肺炎については、ペットで鳥を飼っている場合もそうですが、羽毛布団の長期使用が原因になっている場合もあります。

また、結露でカビが発生しやすい家屋で生活している場合や手入れの行き届かない加湿器・エアコンの使用などが原因となります。数週間〜数ヶ月咳が続く場合にこの病気の可能性がありますので、呼吸器内科受診をお勧めします。

原因を徹底的に探しても見つからないことがあります。その場合、特発性間質性肺炎という病名となります。この病気は、厚生労働省が定める難病の一群です。なかでも、特発性肺線維症(IPF)は間質性肺炎に使用される薬剤(ステロイド)が無効です。以前、私たちが北海道の患者さんを対象に調査しましたところ、生存中央値が約三年と、とても予後の悪い病気であることがわかりました(下図)。

現在、特効薬(抗線維化薬)が使用できるようになり、生存期間が約2倍に延長しています。から咳や息切れなどの症状のある方は是非、呼吸器内科の専門医にご相談ください。また、詳しく知りたい方は、難病情報センターのホームページ(https://www.nanbyou.or.jp/entry/156)をご覧ください。

・肺がん:

全身のがんの中では、最も治療が難しいがんの一つです。通常、肺がんといえば肺に直接発生した原発性肺がんを指します。他の臓器で発生し肺に転移した転移性肺がんとは区別して診療が行われます。肺がんにはたくさんの種類(小細胞がん、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなど)があって、病巣からのサンプルの病理検査(細胞診、組織診)が診断の確定に必要です。自覚症状は種類や進行度(転移した臓器)によって様々で、肺がんに特徴的な症状はありません。無症状なのに発見された時にはすでに進行がんといった場合も多く、定期健診や人間ドックで早期発見することが根治的治療を可能にします。

 

肺がんの治療は、外科手術、放射線照射、薬物治療のいずれか、または組み合わせて行います。さらに使用薬剤は、抗がん剤(細胞障害性抗がん剤)、分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害薬の中から、肺がんの特性に合わせて選択されます。選択の決定には患部から採取されたがん細胞の遺伝子変異情報などが鍵を握ります。

・睡眠時無呼吸症候群(SAS):

睡眠中に無呼吸を繰り返すことで、様々な合併症を起こす病気で、空気の通り道である上気道が狭くなることが原因です。典型的な症状は、いびき、夜間の頻尿、日中の眠気や起床時の頭痛など。とくに日中の眠気は、作業効率の低下、居眠り運転事故や労働災害のリスクとなります。また、高血圧、脳卒中、心筋梗塞などを引き起こすリスクが約3~4倍も高いことが報告されています。経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)が推奨されます。これはマスクを介して持続的に空気を送り、狭くなっている気道を広げる治療です。就寝中にこの治療を続けると、死亡率が明らかに低下することが明らかにされました。