解説 第2回 (掲載日2021年7月1日)
『後期高齢者医療制度と高額療養費』
今回は、後期高齢者医療制度でカバーされる高額療養費について解説します。
制度について知識を高め、自己負担を軽減し適切な診療を継続する一助になれば幸いです。
(1) 対象となる条件は?
後期高齢者医療制度の対象は75歳以上の方とされていますが、65歳以上75歳未満で一定の障がいがある方注)
も対象となります。
注)① 国民年金などの障害年金1ないしは2級を受給している方
② 身体障害者手帳の1~3級(一部は4級も)の方
③ 精神障害者保健福祉手帳の1ないしは2級、
④ 療育手帳のA(重度)
(2) 申請の方法は?
対象となる方には申請のお知らせが送られますが、最初から(医療費が)高額であるとわかっているならば、居住地の市役所(役場)へ申請も可能です。
申請は初回のみで、それ以降に発生した高額療養費については、申請があった口座へ振り込まれます。
振り込まれるには2~3か月みていただいたほうが良いかと思います。
(3) 支給額は?
1か月の自己負担額注)が限度額を超えた場合、超えた分が高額療養費として支給されます。ただし、入院中の実費負担に該当する食事代、差額ベッド代、オムツ代や病衣及びタオルリース代は高額療養費の対象外となります。
注)自己負担限度額は所得によって異なります。
所得区分 | 外来(個人単位)/外来+入院(世帯ごと) |
【現役並み所得Ⅲ】
課税所得690万円以上 | 252,600円+(10割分の医療費-842,000円)×1%
〈多数回140,100円〉
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【現役並み所得Ⅱ】
課税所得380万円以上
| 167,400円+(10割分の医療費-558,000円)×1%
〈多数回93,000円〉
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【現役並み所得Ⅰ】
課税所得145万円以上
| 80,100円+(10割分の医療費-267,000円)×1%
〈多数回44,400円〉
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平成30年8月診療からの1か月の自己負担限度額(1割)
所得区分 | 外来(個人ごと) | 外来+入院(世帯ごと) |
一般 | 18,000円
(年間上限144,000円)
| 57,600円
〈多数回44,400円〉
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区分Ⅱ | 8,000円 | 24,600円 |
区分Ⅰ | 8,000円 | 15,000円 |
次によくあるご質問と回答をまとめてみました。
Q.1 もうすぐ75歳の誕生日が来るのですが、加入手続きは必要ですか?
⇒誕生日前に郵送されてくるので手続きは不要です。
Q.2 保険証に有効期間が令和2年8月1日から令和3年7月31日と書いてあります。更新の手続きはしなくてよいですか?
⇒郵送されてきますので何もしなくて大丈夫です。
Q.3 私は75歳ですが、生活保護を受給しています。
後期高齢者医療制度の対象になりますか?
⇒生活保護受給者の場合は後期高齢者医療制度の対象から外れて、
医療扶助の中で支払われることになります。
Q.4 多数該当って何?
⇒直近1年間で3回、高額療養費の支給対象となった場合、
4回目以降は自己負担限度額がさらに下がるというものです。
Q.5 高額医療で戻るお金があるかどうか知りたいのですが・・
⇒さまざまなケースがありますので、当院を受診されている方は担当者までお尋ねください。参考までに2つのケースをお示しします。
(参考例1) 北広 太郎さん 80歳、1人暮らし 1割負担 区分は一般
A歯科(外来) 医療費 70,000円 自己負担額 7,000円
B病院(外来) 医療費 140,000円 自己負担額 14,000円
B病院(入院) 医療費 500,000円 自己負担額 50,000円
計算方法)
外来分のみ足します ⇒7,000+14,000=21,000
区分一般の方の外来限度額は18,000円なので3000円支給・・①
①で計算した3000円を差し引いた18000円と、入院の自己負担50,000を足して68,000円
世帯の限度額(外来と入院を足したもの)が57,600円
その差は10,400円・・②
①と②を足して13,400円が支給される
(参考例2) 北広 二郎・花子夫妻 2人とも1割負担で区分は一般
二郎さん
A歯科(外来)医療費 190,000円 自己負担は18,000円(限度額いっぱい)
B病院(入院)医療費 1,000,000円 自己負担額は57,600円(限度額いっぱい)
花子さん
Cクリニック(外来)医療費 20,000円 自己負担額 2,000円
外来分については、2人とも限度額超えていないので支給はありません。
外来と入院の分については、二郎さんの18,000円と57,600円を足して75,600円
花子さんの2000円を足して77,600円
世帯の入院・外来分の限度額が57,600円なので、世帯として20,000円が支給される
解説 第1回(掲載日2021年4月1日)
『難病の医療費助成』
わが国では難病を克服するための研究を推進しています。また、それと並行して難病患者への手厚い医療費補助制度を設けています。当院には難病指定医が常勤しています。
国が指定している難病「指定難病」は333疾患に及びます。詳しくは、「難病情報センター」のホームページ(https://www.nanbyou.or.jp)をご覧ください。もし、ご自身・ご家族が患っている病気が難病に該当するかもしれないと思った方は、医療費助成の対象となるかどうか、主治医に相談してみては如何でしょうか。
指定難病は、医療費助成の対象となる場合とならない場合があります。
医療費助成の対象となる基準は以下の通りです。
1.厚生労働大臣が定める重症度分類を満たす重症患者
2.軽症患者は原則対象とならないが、高額な医療費を必要とする場合には助成対象となる
(具体的には、指定難病に係る治療において申請のあった月以前の12か月以内に
医療費が33,000円を超える月が3回以上ある患者)
基準を満たす場合 ⇒ MSWが申請のお手伝い(書類の説明等)を行いますのでお声がけください。